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難病のために学校生活で必要だった配慮

📖 約58✍️ 鈴木 美咲
難病のために学校生活で必要だった配慮
難病や知的障害を抱えるお子さんが学校生活を安全・快適に送るための「合理的配慮」について、実体験に基づいた具体的なアイデアを網羅した記事です。校内移動や空調といった身体的環境の調整から、タブレット活用や試験時間の延長などの学習支援、さらに緊急時の対応マニュアル作成やクラスメイトへの理解促進まで、幅広く解説しています。学校との円滑な交渉術や、「個別の教育支援計画」の重要性にも触れ、保護者が自信を持って学校と連携し、お子さんの学びの権利を守るための具体的な一歩を提案します。

難病と共に通う学校生活——安心と学びを支える合理的配慮の具体例

「難病を抱えながら、他の子と同じように学校生活が送れるだろうか」「先生にどこまで負担をかけていいのか分からない」そんな不安を抱えていませんか。難病や知的障害を伴うお子さんの就学は、家族にとって大きな決断の連続です。特に、見た目では分かりにくい体調の変化や疲れやすさを持つ場合、周囲の理解を得ることに心を砕く場面も多いでしょう。

学校生活を支える鍵は、合理的配慮という考え方にあります。これは、障害のある子が平等に教育を受けられるよう、学校側が行う調整のことです。この記事では、我が家の実体験に基づき、学校に相談して本当に助かった具体的な配慮や、先生とのスムーズなコミュニケーション術を詳しくご紹介します。この記事を読み終える頃には、お子さんの学校生活をより豊かなものにするための具体的なイメージが湧いているはずです。


身体的負担を減らすための環境づくり

校内移動と座席の工夫

難病を抱えるお子さんの中には、筋力が弱かったり、心肺機能の関係で激しい動きが制限されたりする子がいます。我が家の場合、移動による体力の消耗を最小限にすることが最優先課題でした。具体的には、教室の座席を出入り口や教卓の近くに配置してもらうようお願いしました。

これにより、休み時間の移動距離が短くなり、先生の目も届きやすくなります。また、階段の昇降が大きな負担になる場合は、エレベーターの使用許可を得ることも重要です。一見「甘え」に見えてしまうのではないかと心配される親御さんもいますが、これは学ぶためのエネルギーを残すための「正当な調整」です。

体温調節と空調への配慮

難病の種類によっては、自律神経の働きが不安定で、極端に暑さや寒さに弱い場合があります。夏場の熱中症リスクを避けるため、エアコンの風が直接当たらない、かつ涼しい場所での学習環境を整えてもらいました。冬場は、ひざ掛けやカイロの使用を個別に認めてもらうことも大切です。

特に知的障害を伴う場合、本人が「暑い」「苦しい」と自覚して言葉にするのが遅れることがあります。そのため、先生にはこまめな水分補給の促しや、顔色のチェックをお願いしました。こうした細かな配慮の積み重ねが、大きな体調不良を防ぐセーフティネットになります。

💡 ポイント

学校側も「何をすればいいか」を具体的に教えてもらえると助かるものです。環境調整については、医師の診断書や意見書を添えて、根拠を持って伝えるのがスムーズです。

トイレや手洗いの利便性

排泄に関する配慮も欠かせません。車椅子を使用している場合は多目的トイレの利用、自立歩行ができてもトイレが近い場合は、授業中でも遠慮なく中座できる「カード提示」などの合図を決めました。これにより、本人が不安を感じることなく授業に集中できるようになりました。

また、感染症にかかると重症化しやすい難病の子にとって、衛生管理は命に関わります。自動水栓の設置や、アルコール消毒液の持ち込み許可など、学校全体のルールとは別に個別の許可を得ることで、集団生活の中でのリスクを最小限に抑えることができました。


学習の進め方と評価の調整

筆記の負担を軽減するデジタル活用

手の震えや筋力の低下がある場合、鉛筆でノートを取り続けることは苦行になります。我が家では、タブレット端末の使用を導入してもらいました。板書を写真に撮る、音声入力を活用する、タイピングで作文を書くといった配慮です。これにより、書くことに精一杯で内容が頭に入らないという本末転倒な事態を防げました。

「みんなが書いてるのに一人だけタブレットはずるい」といった周囲の反応を心配されるかもしれませんが、先生がクラス全体に「眼鏡と同じ、学習に必要な道具」として説明してくれたことで、自然に受け入れられました。大切なのは、手段を固定せず、目的を達成するための方法を柔軟に変えることです。

宿題の量と試験時間の延長

難病の子は帰宅後の疲労が激しく、通常の宿題をこなすのが困難な日があります。そこで、宿題の量を調整してもらったり、提出期限を柔軟に設定してもらったりしました。また、試験についても、集中力が持続しにくい特性を考慮し、別室受験や時間の延長、適宜休憩を入れるといった配慮を受けました。

文部科学省のデータによると、公立学校において合理的配慮を必要とする児童生徒への対応は年々進んでおり、こうした調整は一般的になりつつあります。試験時間の延長などは、将来の高校入試や大学共通テストでも認められる「公的な配慮」の一つですので、早いうちから学校生活に取り入れて慣れておくことが望ましいです。

配慮の項目 具体的な内容 期待できる効果
試験時間の延長 通常の1.3〜1.5倍程度の時間設定 焦りによるパニックや疲れを防ぐ
別室での学習 静かな環境での小テストや授業 感覚過敏や集中力の維持に対応
教材の工夫 拡大写本やルビ振り、要約プリント 読み取りの負担を減らし理解を深める

知的障害がある場合のカリキュラム調整

難病に加えて知的障害を伴う場合、通常のクラスで同じ教科を学ぶことが難しい場面が出てきます。その際は、交流学級(通常級)と通級指導教室、または特別支援学級を組み合わせて、本人の理解度に合わせた指導を行ってもらいました。全ての科目を完璧にこなすのではなく、「できること」を伸ばす評価軸に切り替えてもらえたことが、本人の自信に繋がりました。

図工や音楽など、本人が得意とする分野では通常級の友達と一緒に過ごし、算数や国語は個別の進度で学ぶ。こうした「オーダーメイド」の学習スタイルを認めてもらえることが、特別支援教育の大きなメリットです。評価についても、通知表の文言を工夫してもらうなど、成長を実感できる形に整えてもらいました。


体調の変化に備える緊急時の体制

主治医との連携と緊急連絡先

難病児の学校生活で最も怖いのは、急な発作や体調悪化です。これを防ぎ、起きた際に迅速に対応するため、学校側と「緊急時対応マニュアル」を作成しました。そこには、どのような症状が出たら救急車を呼ぶか、あるいは安静にするだけで良いのかといった判断基準を明記しています。

また、主治医の連絡先だけでなく、日頃の様子を知っているリハビリ施設のスタッフなどの連絡先も共有しました。教員だけでなく、養護教諭(保健室の先生)を交えたケース会議を定期的に開くことで、学校全体の認識を統一しておくことが、万が一の際の命綱になります。

保健室の利用ルールと「早退」の基準

「少ししんどい」と感じたときに、すぐに保健室で横になれる許可を得ておきました。通常、保健室の利用には担任の許可が必要ですが、難病の子の場合は「本人の自己申告で即利用可能」としてもらう配慮が有効です。早期に休むことで、重症化を防ぎ、翌日の登校を可能にするためです。

また、早退についても「熱が出てから」ではなく「いつもより顔色が悪い、活気がない」といった前兆の段階で連絡をもらうようお願いしました。これにより、学校と家庭の連携がスムーズになり、本人の身体的・精神的な負担が大幅に軽減されました。早退は決して失敗ではなく、体力を温存するための賢い選択です。

⚠️ 注意

学校側が全ての責任を負うのは難しいため、薬の服用管理や特殊な器具の操作については、事前に校長先生や教育委員会と責任の範囲を明確にしておくことが重要です。

行事参加におけるプランBの作成

運動会、遠足、修学旅行といった大きな行事は、子供たちが最も楽しみにする一方で、最も体力を消耗します。これらの行事には必ず「プランB(代替案)」を用意してもらいました。例えば、徒歩での移動が無理な場合は車での合流を認めてもらう、あるいは全体練習には参加せず本番のみ短時間参加するなどです。

行事の目的は「みんなと同じことをすること」ではなく、「その行事の楽しさを分かち合うこと」です。親も同伴が必要な場合がありますが、最近ではヘルパーの同行を認める自治体も増えています。学校のルールに縛られすぎず、どうすれば参加できるかを前向きに検討してくれる先生方の姿勢が、私たち親子に大きな勇気をくれました。


心理的サポートと周囲の理解

クラスメイトへの「障害理解教育」

難病や知的障害があることで、他の子と違う行動(突然寝る、特別な道具を使うなど)をとる際、クラスメイトの理解は欠かせません。我が家では、学年初めに先生にお願いして、娘の特性についてのポジティブな説明をしてもらいました。「〇〇さんは病気で疲れやすいから、座って応援するんだよ」「このタブレットは彼女の魔法の道具なんだよ」といった内容です。

子供たちは、正しく知れば驚くほど素直に受け入れてくれます。むしろ、隠してしまうことが誤解やいじめの火種になることもあります。障害を「かわいそうなこと」としてではなく、単なる「個性の一つ」としてクラス全体で共有できたことが、娘にとって学校を最高の居心地にする要因となりました。

心のエネルギー切れ(二次障害)を防ぐ

難病の症状だけでなく、周囲についていこうと無理をしすぎることで、不登校やうつ状態といった二次障害を引き起こすリスクがあります。知的障害を伴う場合、本人がストレスに気づかず、自傷行為やパニックとして現れることもあります。そのため、スクールカウンセラーとの定期的な面談を設定してもらいました。

家庭と学校、そして専門家の3者で本人の「心の元気」をモニタリングすることは、学習の遅れよりもはるかに重要です。「今日は頑張りすぎたから、明日は遅刻して行こう」といった柔軟な判断を、学校側が「サボり」ではなく「必要な調整」と捉えてくれることが、親の心の支えになります。

「学校の先生が『今日は保健室で一緒に本を読みましょうか』と言ってくれたとき、本当にこの学校を選んで良かったと涙が出ました。学びの形は一つではありません。」

— 難病児の保護者 Aさん

コミュニケーションツールとしての連絡帳

体調の変化が激しい難病の子にとって、日々の連絡帳は非常に重要な役割を果たします。単なる事務連絡だけでなく、「昨夜の睡眠時間」「朝の顔色」「薬の副作用の有無」などを記入し、学校側からは「授業中の集中度」「給食の摂取量」などを報告してもらいました。

こうした細かな情報のやり取りが、信頼関係の構築に繋がります。最近ではICTを活用した連絡アプリを導入している学校も増えており、よりリアルタイムに近い形での連携が可能になっています。忙しい先生の手を煩わせないよう、要点をまとめたチェックリスト形式にすることも、成功のコツの一つです。


先生や支援者との円滑な交渉術

「合理的配慮」の申し入れ方法

学校に配慮をお願いする際、どうしても「わがままを言っているのではないか」という申し訳なさを感じるかもしれません。しかし、合理的配慮は法律(障害者差別解消法)に基づいた権利です。卑屈になる必要はありませんが、一方で学校側のリソース(人手や時間)にも限界があることを理解しておく必要があります。

交渉を成功させるコツは、「対立」ではなく「共同作業」の姿勢を持つことです。「〇〇をしてください」という一方的な要求ではなく、「娘の体力を温存するために、例えば××のような方法は可能でしょうか」と、具体的な代替案を提案する形で相談を進めましょう。以下に、相談をスムーズにするステップをまとめます。

  1. 事前の自己分析:子供の特性、苦手なこと、得意なことを整理する
  2. エビデンスの準備:医師の意見書、以前の学校や施設での成功事例を用意する
  3. 具体的提案:学校の現行ルールを尊重しつつ、具体的な調整案を出す
  4. 合意と記録:話し合った内容を「個別の教育支援計画」に明文化してもらう

個別の教育支援計画(IEP)の作成

口約束だけでは、学年が変わった際や担当の先生が異動した際に、支援が途切れてしまう恐れがあります。そこで活用すべきなのが、個別の教育支援計画や個別の指導計画です。これらは、お子さん一人ひとりのニーズに合わせて作成される公的な文書です。

この計画書に、どのような難病があり、どのような配慮が必要かを細かく記載してもらいます。一度作成して終わりではなく、半期ごとに振り返りを行い、成長や症状の変化に合わせてアップデートしていくことが重要です。これが一冊あることで、中学校や高校への進学時の「引き継ぎ資料」としても大きな威力を発揮します。

✅ 成功のコツ

先生への感謝の気持ちを言葉にしつつ、要望は「紙に書いて渡す」ことを徹底しましょう。聞き間違いを防ぎ、先生が職員会議などで共有しやすくなります。

教育委員会や外部専門家の活用

学校だけの対応では限界がある場合、教育委員会に設置されている「就学相談員」や、専門の巡回指導教員に間に入ってもらうことも検討してください。また、難病の場合は患者団体や相談支援事業所のスタッフから、他の学校での好事例(グッドプラクティス)を教えてもらうことも有効です。

「この地域では前例がない」と言われたとしても、他校での事例があれば学校側も検討しやすくなります。孤立無援で頑張るのではなく、外部のリソースを味方につけることが、結果的にお子さんの権利を守ることになります。一人で悩まず、社会全体で支えてもらう意識を持ちましょう。


よくある質問(FAQ)

Q. 合理的配慮をお願いしたら、成績に不利になりませんか?

基本的には、配慮を受けることで成績が下がることはありません。むしろ、配慮によって本人の実力が発揮されやすくなるため、正当な評価に繋がります。ただし、学習内容を大幅に簡略化している場合は、評価基準が通常と異なることがあります。不安な場合は、評価の方法(どのような基準で成績をつけるか)についても事前に確認しておくことをお勧めします。

Q. 遠足などの行事に親の付き添いを求められました。拒否できますか?

現在の指針では、保護者の同伴を「必須条件」として行事への参加を制限することは望ましくないとされています。しかし、安全確保のためにどうしても人手が必要な場合もあります。まずは「なぜ同伴が必要なのか(どんなリスクを懸念しているか)」を聞き出し、ボランティアや移動支援ヘルパーの活用、あるいは一部のみの参加など、親の負担を軽減する代替案を一緒に考えましょう。

Q. 先生が難病についてあまり理解してくれません。どうすればいいですか?

難病は非常に種類が多く、医師でも専門外のことは詳しくない場合があります。先生も「知らないから不安」なだけかもしれません。分かりやすい解説書や、疾患の概要をまとめたチラシ、または患者家族が作成した「サポートブック」を手渡してみてください。また、訪問看護師や主治医から学校へ直接説明をしてもらう機会を設けるのも非常に効果的です。専門家の言葉は、先生の安心感に直結します。


まとめ

難病を抱える子の学校生活は、確かに課題も多いですが、適切な配慮と工夫があれば、かけがえのない学びの場になります。大切なのは、親、学校、医療機関がワンチームとなって、お子さんを真ん中に置いた対話を続けることです。

  • 環境調整は「学ぶ権利」を守るため:座席、空調、トイレなど、体力を温存する工夫を具体的に提案しましょう。
  • 学習方法は柔軟に:タブレット活用や課題の調整など、本人の負担を減らし自信を育む方法を探ります。
  • 緊急時の備えが安心を作る:明確なマニュアルと連絡体制が、先生の不安も親の不安も取り除きます。

お子さんは、学校という社会の中で、病気があっても自分らしく生きる力を育んでいます。その歩みを信じて、一歩ずつ進んでいきましょう。もし壁にぶつかったら、地域の相談支援センターや同じ悩みを持つ仲間に頼ってください。あなたは一人ではありません。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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