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入院生活を経験して変わったこと

📖 約24✍️ 鈴木 美咲
入院生活を経験して変わったこと
「入院 = 終わり」だと思っていた私の2ヶ月間の精神科病棟生活——規則正しい生活リズム、作業療法、グループセラピー、仲間との出会い。24時間の見守りによる安心感。助けを求めることを学び、自分を許せるようになった。入院は終わりではなく、回復への転機。入院に不安を感じる全ての人へ贈る実体験です。

「入院」という選択——最後の手段だと思っていた

「入院を検討しましょう」——主治医からその言葉を聞いた時、私は絶望しました。「入院なんて、本当に重い人がすること」「私はそこまでじゃない」「入院したら、もう終わりだ」——そう思っていました。

でも実際は、症状が悪化し、自宅療養では限界に達していました。希死念慮が強まり、日常生活もままならない状態。家族も疲弊していました。入院は、「終わり」ではなく「回復への転機」でした。

この記事では、精神科病棟での2ヶ月間の入院生活を経て、私が経験したこと、学んだこと、そして変わったことについてお話しします。入院に不安を感じている方、または入院中の方の参考になれば幸いです。

入院を決めるまで——葛藤と決断

「入院したくない」という抵抗

主治医から入院を勧められてから、実際に入院を決めるまで1週間かかりました。その間、私の心は激しく揺れ動きました

入院への抵抗感は、以下のようなものでした。

  • 「入院 = 重症」というイメージへの恐怖
  • 「閉じ込められる」という不安
  • 「自由を奪われる」という恐れ
  • 「仕事を長期間休む」ことへの罪悪感
  • 「家族に迷惑をかける」という思い
  • 「退院できなくなるのでは」という不安
  • 「精神科病棟」への偏見

でも同時に、もう限界だという自覚もありました。このまま自宅にいても、良くなる気がしませんでした。

⚠️ 注意

精神科への入院は、症状が重症化した時だけでなく、集中的な治療が必要な時、自宅療養が困難な時にも選択肢となります。早期の入院が、結果的に回復を早めることも多いのです。

家族との話し合い

入院を決める前に、家族と話し合いました。母親は涙ぐみながら言いました——「あなたが良くなるなら、入院した方がいい。家では限界だと思う」。

その言葉で、私は家族も疲れていることに気づきました。私の症状に振り回され、常に気を使い、見守り続けることに、家族も疲弊していたのです。

入院は、私のためだけでなく、家族のためでもあると理解しました。

入院を決めた日

最終的に入院を決めたのは、希死念慮が強まった日でした。

「もう生きていたくない」という思いが、どうしても消えませんでした。家族に心配をかけたくなくて、笑顔を作ろうとしましたが、限界でした。

その日、私は主治医に電話しました——「入院したいです」と。

主治医は落ち着いた声で言いました——「よく決断してくれました。一緒に治していきましょう」。

「入院は『逃げ』でも『終わり』でもありません。むしろ、本気で治そうという前向きな選択です。環境を変えて、集中的に治療に取り組む——それが入院なんです」

— 主治医の言葉

入院初日——不安と緊張

病棟に入る時

入院当日、私は大きな荷物を抱えて病棟の扉をくぐりました。扉が閉まる音を聞いた時、「本当に入院してしまった」という実感が湧きました。

看護師さんが笑顔で迎えてくれました。「ようこそ。まずはゆっくり休んでくださいね」——その優しい言葉に、少しだけ緊張がほぐれました。

個室に案内され、荷物を置きました。窓からは、外の景色が見えました。「ここが、これから2ヶ月過ごす場所なんだ」と思うと、複雑な気持ちになりました。

初めての病棟生活

入院初日は、オリエンテーションから始まりました。病棟のルール、一日のスケジュール、使える設備——様々な説明を受けました。

精神科病棟での主なルールは、以下のようなものでした。

項目 内容
起床時間 6時30分(消灯は21時)
食事時間 朝8時、昼12時、夜18時
携帯電話 使用可能(時間制限あり)
外出・外泊 主治医の許可が必要
面会時間 平日14-20時、休日10-20時
入浴 決められた時間に(週3回程度)

規則正しい生活リズムが、治療の基本だと説明されました。

他の患者さんたちとの出会い

病棟には、様々な人がいました。年齢も、性別も、症状も、背景も——すべてが違う人たちが、同じ空間で生活していました。

最初は怖かったです。「どんな人がいるのだろう」「危険な人はいないだろうか」——そんな不安がありました。

でも実際には、みんな普通の人でした。病気で苦しんでいる、でもそれ以外は普通の人たち。私と同じように、良くなりたいと思っている人たちでした。

💡 ポイント

精神科病棟は、メディアで描かれるイメージとは大きく異なります。多くは穏やかな雰囲気で、スタッフのサポートのもと、患者同士が支え合いながら回復を目指す場所です。

入院生活のリズム——規則正しい日々

一日のスケジュール

入院生活は、規則正しいスケジュールで進みました。

典型的な一日は、以下のようなものでした。

  • 6:30 起床、洗面
  • 8:00 朝食
  • 9:00 清掃、服薬
  • 10:00 作業療法(手芸、塗り絵など)
  • 12:00 昼食
  • 13:00 自由時間(読書、テレビなど)
  • 14:00 グループセラピー
  • 15:00 医師の回診
  • 16:00 自由時間
  • 18:00 夕食
  • 19:00 入浴時間
  • 20:00 自由時間
  • 21:00 消灯

最初はこのスケジュールに従うのが辛かったです。でも次第に、生活リズムが整うことを実感しました。

作業療法という時間

入院生活で意外だったのは、作業療法が充実していたことでした。

塗り絵、折り紙、手芸、園芸、料理——様々なプログラムがありました。最初は「こんなことをして意味があるのか」と思いました。

でも実際に参加してみると、不思議と心が落ち着きました。手を動かすことで、頭の中のネガティブな思考が静まるのです。

特に塗り絵は、「今、この瞬間」に集中できる良い活動でした。過去の後悔や未来の不安から離れ、ただ色を塗ることに没頭する——その時間が、貴重でした。

グループセラピー

週に数回、グループセラピーがありました。患者数名と看護師が輪になって座り、テーマについて話し合うものでした。

最初は発言するのが怖かったです。でも他の人の話を聞くうちに、「自分だけじゃない」と感じられました。

ある日のテーマは「病気になって失ったもの、得たもの」でした。皆、失ったものばかり話すかと思いきや、得たものも多く語られました

「自分を大切にすることを学んだ」「本当に大切なものがわかった」「人の優しさに気づけた」——こうした言葉に、私は勇気をもらいました。

入院中の変化——少しずつ回復へ

薬の調整

入院中、主治医は薬の調整を頻繁に行いました。外来では難しい、細かな調整ができるのが、入院のメリットでした。

効果と副作用を毎日観察しながら、私に最適な薬と用量を見つけていくプロセス。看護師さんが24時間いるので、何かあればすぐに対応してもらえる安心感がありました。

入院から3週間ほどで、薬の組み合わせが決まりました。そこから、徐々に症状が改善していきました。

睡眠リズムの回復

入院前、私の睡眠リズムは完全に崩れていました。明け方まで眠れず、昼過ぎまで寝ている——そんな生活でした。

でも入院生活の規則正しいスケジュールのおかげで、睡眠リズムが整いました。毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝る。これだけで、心身の状態が大きく改善しました。

睡眠がしっかり取れるようになると、日中の気分も安定してきました。「睡眠がこんなに重要だったのか」と、初めて実感しました。

「安心感」という治療

入院生活で最も大きかったのは、「安心感」でした。

何かあれば、すぐに看護師さんを呼べる。つらい時は、話を聞いてもらえる。夜中に不安になっても、スタッフがいる——この安心感が、私を支えてくれました。

自宅では、「一人で何とかしなければ」というプレッシャーがありました。でも病棟では、そのプレッシャーから解放されました。

「頼っていい」「助けを求めていい」——そう思えることが、大きな癒しになりました。

✅ 成功のコツ

入院の大きなメリットは、専門家に24時間見守られる安心感と、日常のストレスから離れた環境です。この「安全な場所」で集中的に治療に取り組めることが、回復を加速させます。

仲間との出会い——「一人じゃない」

同じ病を持つ仲間

入院生活で予想外に大きかったのは、仲間との出会いでした。

同じ病棟で過ごす中で、自然と会話が生まれました。病気のこと、症状のこと、治療のこと——外では話しにくいことを、ここでは自然に話せました。

ある日、食堂で隣に座った女性が言いました——「私も最初は入院したくなかった。でも来て良かったと思ってる」。

その言葉に、「自分だけじゃない」と感じられました。

支え合う関係

病棟では、患者同士が自然と支え合う雰囲気がありました。

調子が悪そうな人がいれば、「大丈夫?」と声をかける。誰かが退院する日には、みんなで拍手をする。新しく入院してきた人がいれば、優しく迎える——そんな温かい関係がありました。

私も、入院したての頃に先輩患者さんに助けてもらいました。病棟のこと、治療のこと、退院後のこと——様々なアドバイスをもらいました。

そして自分が慣れてきた頃には、新しい患者さんをサポートする側になっていました。「人の役に立てる」という実感が、自己肯定感を高めてくれました。

回復のロールモデル

病棟には、もうすぐ退院という段階の患者さんもいました。彼らは、私にとって希望の象徴でした。

「私もあんな風に回復できるんだ」「退院できる日が来るんだ」——そう思えることが、大きな励みになりました。

退院していく人たちを見送る時は、寂しさもありましたが、それ以上に「次は自分の番だ」という希望がありました。

退院に向けて——段階的な準備

外出許可

入院から1ヶ月半が経った頃、主治医から外出許可が出ました。

最初は院内の散歩から。次は病院の敷地内。そして近所のコンビニへ——段階的に、外の世界に慣れていきました。

初めて病院の外に出た時、新鮮な空気が胸に入ってきました。「外の世界は、こんなに明るかったんだ」と感じました。

外泊訓練

退院の2週間前、外泊訓練が始まりました。週末に自宅に帰り、月曜日に戻ってくるというものでした。

最初の外泊は不安でした。「自宅で大丈夫だろうか」「また悪くなるのでは」——そんな思いがありました。

でも実際に帰ってみると、以前とは違う自分がいました。規則正しい生活リズムを保てる。家族とも穏やかに話せる。不安な時は、病棟で学んだ対処法を使える——。

外泊を無事に終えて病棟に戻った時、看護師さんが言いました——「よく頑張りましたね。もう退院できますよ」。

退院の日

入院から2ヶ月後、私は退院しました。

荷物をまとめながら、この2ヶ月を振り返りました。辛いこともあったけれど、得たものの方がはるかに大きかったと感じました。

病棟のスタッフや仲間たちに見送られながら、病棟を後にしました。扉を出る時、「ここで過ごした日々を忘れない」と思いました。

入院を経験して変わったこと

「助けを求める」ことを学んだ

入院前の私は、一人で何とかしようとしていました。助けを求めることは、弱さだと思っていました。

でも入院生活で、助けを求めることの大切さを学びました。苦しい時は、素直に「助けて」と言っていい。それは弱さではなく、勇気なのだと。

今でもこの学びは、私を支えてくれています。

規則正しい生活の重要性

入院生活で身についた規則正しい生活リズムは、退院後も続けています。

毎日同じ時間に起き、食事を取り、寝る。これだけで、心の安定度が全く違います。

「生活リズム」という土台があってこそ、その上に治療や回復が成り立つのだと理解しました。

自分を許せるようになった

入院前、私は自分を責め続けていました。「なぜ病気になったのか」「なぜ弱いのか」——そんな思いがありました。

でも病棟で様々な人と出会い、誰でも病気になりうると理解しました。病気は、恥ずかしいことでも、自分のせいでもない。

自分を許せるようになったことが、回復への大きな一歩でした。

「入院」への偏見がなくなった

入院前は、「入院 = 終わり」だと思っていました。でも実際には、入院は新しい始まりでした。

集中的に治療に取り組み、生活を立て直し、回復への道筋をつける——そのための場所が、入院だったのです。

今では、もし必要になれば、また入院することに抵抗はありません。それは「治療の選択肢の一つ」だと理解しているからです。

入院に不安を感じている人へ

「入院 = 終わり」ではない

もし今、入院を勧められて不安を感じているなら、まず知ってほしいことがあります。入院は「終わり」ではなく、「回復への転機」です。

環境を変えて、集中的に治療に取り組む。それが入院の意味です。決して、あなたを閉じ込めるためのものではありません。

現代の精神科病棟

精神科病棟は、メディアで描かれるイメージとは大きく異なります。多くは穏やかで、温かい雰囲気です。

スタッフは親切で、患者は普通の人たち。規則正しい生活と、手厚いケアがあります。

不安なことがあれば、入院前に見学させてもらうこともできます。主治医に相談してみてください。

家族も休める

入院は、本人だけでなく家族にとっても休息になります。

常に見守り、気を使い続けることは、家族にとって大きな負担です。入院中は、その負担から一時的に解放されます。

「家族に申し訳ない」と思うかもしれませんが、むしろ入院することで、家族も休めるのです。

必ず退院できる

「一度入院したら、出られなくなるのでは」——そんな不安があるかもしれません。でも、必ず退院できます

入院は一時的なものです。症状が安定し、生活が立て直せれば、退院できます。多くの人が、数週間から数ヶ月で退院しています。

入院は、あなたの人生の終わりではなく、新しい章の始まりなのです。

「入院は、『リセットボタン』のようなものです。一度生活をリセットして、健康的なリズムを取り戻す。そこから、新しい人生が始まるんです」

— 退院時に主治医が言ってくれた言葉

よくある質問

Q1: 入院期間はどのくらいですか?

症状や治療の進み具合によって異なりますが、平均的には2週間〜3ヶ月程度です。急性期の治療が目的の場合は短期間、生活リズムの立て直しも含める場合は長期間になることがあります。主治医と相談しながら決めていきます。

Q2: 入院費用はどのくらいかかりますか?

健康保険が適用されます。また、高額療養費制度や自立支援医療制度を利用することで、さらに負担を軽減できます。具体的な金額は、病院の種類や部屋のタイプによって異なりますが、月額数万円〜十数万円程度が一般的です。事前に医療相談室で相談できます。

Q3: 携帯電話やパソコンは使えますか?

多くの病院で使用可能ですが、時間帯や場所に制限があることがあります。また、症状によっては制限される場合もあります。各病院のルールに従ってください。

Q4: 面会はできますか?

はい、決められた時間内であれば面会可能です。ただし、入院直後や症状が不安定な時期は、面会を制限することもあります。主治医の判断に従ってください。

Q5: 強制的に入院させられることはありますか?

基本的には本人の同意のもとでの入院(任意入院)です。ただし、自傷他害の恐れがあり本人の同意が得られない場合、医療保護入院や措置入院という制度があります。いずれも法的な手続きに基づいて行われ、定期的な審査があります。

まとめ

この記事では、精神科病棟での2ヶ月間の入院生活を通じて、私が経験したこと、学んだこと、変わったことについてお話ししました。

  • 入院は「終わり」ではなく、回復への転機です
  • 規則正しい生活、専門的なケア、安心感が回復を支えます
  • 仲間との出会いが、「一人じゃない」という実感を与えてくれます
  • 入院で学んだことは、退院後も人生を支える財産になります

もし今、入院に不安を感じているなら、それは自然なことです。でも入院は、あなたを助けるための場所です。回復への大切な一歩として、前向きに検討してみてください。必ず、良くなる日が来ます。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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